飴ちゃん食べる?~よろしく焼肉ホスト部♡
 肉を焼き続けるのも楽しい。

 それはきっと、お客さんたちが美味しそうに食べてくれるから。
 それはきっと、天野スミス唯と一緒に焼いているから。

 天野スミス唯も満足そうな顔で、たまに肉を見ながら微笑んでいた。

 とても幸せな空間だった。
 だけどそれを感じられたのは、わずかな時間だった。

「おい、なんでこっちのチーム、あんまり客来ないんだよ。今誰もいないじゃねーか!」
「2年が客うばってるんじゃねーか?」
「もう負け確定じゃねーか!」

 3年生のヤンキーホストチームから、いらだつ声がいくつも流れてくる。そしてとうとう3年チームたちが、盛り上がっている2年チームの会場にやってきた。

 不穏な空気。

 お客さんたちは、3年生のヤンキーホストたちを引き気味な視線で見ている。

 いつもみたいな喧嘩が起こりそうな雰囲気。

 喧嘩が起こりませんようにと、肉を焼きながら私は願うことしかできない。

――本当に、今日は喧嘩が起こりませんように!

 3年生チームが誰も座っていない椅子を投げた。
 状況が悪化していく。

「おい、お前ら、客こねえからって俺らに八つ当たりすんなよ」
「なんだこら、やるか?」

 あぁ、喧嘩が始まりそう。暴力だけは絶対にダメだよ……と思っている時だった。

 軽く押し合いを始めたヤンキーホストたち。3年生ヤンキーが肉を焼いている私たちのところにぶつかりそうになった。

 天野スミス唯は周りを気にせず、微笑みながら肉を丁寧に焼いている。

――邪魔をしてはいけない。

 不思議なことに、焼き網にヤンキーがぶつかりそうな瞬間がスローモーションに見えてくる。
 
 私は、その3年生を「いい加減にしろ」と叫びながら投げ飛ばした。

 投げ飛ばしてしまった――。
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