苦手な上司にプロポーズすることになりました
「それにしても、由人の母親はなかなかの策士だな。
 佑茉から話を聞きたいから、時間のかかるうなぎ屋に連れていくとか」
と高嶺は笑う。

 由人より、由人母の方が気に入っているようだった。

「由人もそういう、いい意味で小狡(こずる)いところもないと駄目だぞ。
 お前は真正面からぶつかってって、砕け散りそうだ」

 ……砕け散るんだ?

 いえ、と由人は考えながら言う。

「俺も無意識のうちに策略を巡らせていたりするのかもしれません」

 ほう、と言う高嶺に、
「この間、爪切りを買ったんですよ」
と由人は言った。

「素晴らしく切れ味のいい、職人さんが丹精込めて作ったという高価な爪切りで。

 いいなと思いながら、なかなか買うまではいかなかったんですけど。

 うっかり買ってしまったのは、薬川のことがあったからかもなのかも」

「なんで、それが佑茉と関係がある」
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