苦手な上司にプロポーズすることになりました
「薬川は小指の爪でメガネのネジを締めていたらしいんですが」

 いや、ドライバーで締めろよ、という顔を鈴木以外がした。

「俺が締めてやるから切れと言ったんです。

 薬川は今、爪を切っていますが。
 いずれ、また伸びてくるじゃないですか。

 俺を必要としてくれるように、夜な夜な切るか削るかしてやろうと無意識のうちに思っていたのかも」

「……ずいぶんと可愛い策士だな」
と言う高嶺は呆れ顔ではあったが。
 その目は、好ましげに由人を見ていた。

 だが、その横で鈴木がおのれの小指を見つめて呟く。

「伸ばそうかな」

 何故、あなたが……?
と思ったとき、顔を上げ、鈴木が笑いかけてきた。

「佑茉、伸びたら、ネジ回してやるよ」

 ドライバーでじゃなくて!?

 さすが鈴木だな、と思った。

 発想が普通でない。
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