ただ、一面の青。
ふん、と鼻息荒く歩けば「はいはい」と大人ぶった対応で瀬戸が後を追いかけて来た。
「そういう事にしておくよ」
核心に触れるか触れないか、瀬戸は引き際が上手いと思う。その対応に救われる。
「瀬戸のくせに偉そうにすんな」
「クズサク」
「うっせーよ」
2人揃って廊下を歩けば、いつも通り多くの視線や声。好意的なものも、そうじゃない物も。人の悪口なんて全く気にならないけど今日ばかりは少し気に掛かった。
話題の多くが菜乃花の事だったから。
「サク、先輩と別れて転校生と付き合ったらしいよ」
「は?嘘でしょ」
「本当!ユナちゃんが言ってたもん。名前、何だっけ」
「植草菜乃花。清純なフリしてビッチって事?」
「じゃん?男関係で転校して来たって聞いたよ」
女子達の噂話。
「植草さん、大人しそうな見た目で男好きか〜」
「アリだわ」
「俺もヤらせてくれるかな」
「童貞卒業したいだけだろ。草」
「でも正直いい体してない?胸でかい」
男子達の噂話。
菜乃花の事なんて俺に関係ない。あいつが傷つこうが悲しもうが関係ない。
なのに吐きそうなほどの不快感。話してる奴ら全員ボコボコに殴りつけて二度とその口から菜乃花の名前を出させたくないくらい。
なぜそんな思いになるのか。
菜乃花と再会してから言語化できない感情ばかりで苛立ちが募る。手から水がこぼれ落ちるみたいに感情が流れ落ちていく。
気を抜いたら本当に殴ってしまいそうで、舌打ちをして逃げるように足速に歩く。その耳に「ねぇ、サク!」と届いた声。