Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜

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 翌日の夜も慧弥に迎えに来てもらい、約束どおり夕食を一緒に食べた。想乃が好物だと言った覚えもないのに寿司屋に連れて行ってもらい、高級な握りをいくつもいただいた。

 家にひとりきりで留守番をする郷にはあらかじめデリバリーサービスを手配していたらしく、想乃が帰宅すると郷はピザを頬張って上機嫌だった。

 郷と慧弥は確かライン友達だったなと思い出し、自分の食べ物の好みは郷から聞いたんだなと察した。

 土曜日の丸一日のコンビニ業務を終えて日曜の朝を迎えた。慧弥との待ち合わせ時間は午前九時半。待ち合わせといっても自宅前まで車で来てくれるので、想乃は支度を済ませて家を出るだけでいい。

 洗面台で化粧をする際、安価な化粧水を手に取りため息がもれた。いい加減買い直さないといけないな。おでこの端に新たなにきびができていた。化粧水だけじゃない。きっと生活習慣そのものを見直さないと肌荒れはまだ続くだろう。

 鏡で髪型と化粧、服装をチェックして三和土(たたき)に並べたパンプスに足を入れた。今日選んだスカートスタイルも五センチ程度のヒールも音大時代に身に付けていたもので、久しぶりの感覚にテンションが上がる。

 慧弥さんにまた可愛いって言ってもらいたい。ひそかな打算も働いた。
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