Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
急に名指しされて戸惑う。視界の先に声の主を認めた。
ベージュ色のトレンチコートを上品に着こなしたロングヘアの美人だ。前髪をセンターパートに分けて、薄いカラーレンズのサングラスをかけている。きりっとした目元が透けて見えた。
想乃は迫力のある美人を見つめ、ただ無言で自分に指を差した。彼女がこくりと顎を引く。
「あなた慧弥の婚約者でしょう? 調べたわよ」
発色のいい口紅を引いたそれがにこりと弧を描き、急に合点がいった。「調べた」という言葉を聞き、慧弥が以前言っていた「婚前調査」という言葉を思い出していた。
もしかしてこの人……。
「あの……慧弥さんの、お姉さん、ですか?」
「あら。私のことも聞いているのね。並樹 黎奈よ。今ちょっといいかしら?」
言いながら院内へ入るよう手招きされた。想乃はバッグの持ち手をぎゅっと握り直し、はい、と返事をする。くるりと踵を返した彼女に付いて歩く。ブランドものの香水だろうか。彼女から甘みを帯びたいい匂いがする。
ベージュ色のトレンチコートを上品に着こなしたロングヘアの美人だ。前髪をセンターパートに分けて、薄いカラーレンズのサングラスをかけている。きりっとした目元が透けて見えた。
想乃は迫力のある美人を見つめ、ただ無言で自分に指を差した。彼女がこくりと顎を引く。
「あなた慧弥の婚約者でしょう? 調べたわよ」
発色のいい口紅を引いたそれがにこりと弧を描き、急に合点がいった。「調べた」という言葉を聞き、慧弥が以前言っていた「婚前調査」という言葉を思い出していた。
もしかしてこの人……。
「あの……慧弥さんの、お姉さん、ですか?」
「あら。私のことも聞いているのね。並樹 黎奈よ。今ちょっといいかしら?」
言いながら院内へ入るよう手招きされた。想乃はバッグの持ち手をぎゅっと握り直し、はい、と返事をする。くるりと踵を返した彼女に付いて歩く。ブランドものの香水だろうか。彼女から甘みを帯びたいい匂いがする。