Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「ひ、ひどいっ。それでなんで笑うんですか」
「いや、だって。あははっ、その表情(かお)やめて、面白いっ」
「ちょ、慧弥さんっ!? 本当に失礼ですよっ!」

 ついにはお腹を抱えて笑い出す彼を見て、想乃は意味もなくぱたぱたと手を振っておさめようとした。

「ごめんっ、でもさ、前に想乃がさ、会社の廊下で汚水をぶちまけたことあったじゃん? あんときもチワワみたいな目ぇしてぴえんって泣いてて、やばい……思い出したらめちゃくちゃジワる……っ」
「もう、笑わないでくださいってば!」

 あはははは、と慧弥の笑い声が響いて、周りの視線を集めた。ちらほらとつられて笑っている人もいる。

 想乃は今になってようやく気がついた。

 このひと絶対Sだ。

 あたふたする想乃の態度と表情が笑いのツボに入り、とんでもなく可笑しいらしい。

「前から気づいていたけど。想乃って思ってることがモロに顔に出るタイプだよね」
「っえ、そう、なんですか?」
「ふふふっ、いつもは物言わぬお人形さんみたいな表情(かお)してるのになぁ」

 慧弥が想乃をちらちら見ながら、未だに堪えきれずに笑っている。想乃は真っ赤な顔で頬を膨らませた。
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