Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 太って着られなくなりました、なんて言ったら彼は呆れて笑うかもしれない。それはさすがにへこむ。

 もっと気をつけなくちゃいけないなぁ。

 そう思うものの、昨日は仕方なかったと自分のなかで言い訳を並べ立てた。

 昨日は慧弥の二十七歳の誕生日ということもあり、御三家のひとつである五つ星ホテルへ連れて行ってもらい、豪華なディナーをいただいた。

 生まれて初めて食べるフランス料理のフルコースは、カタカナが並んだ料理名ばかりでとても覚えられなかったけれど。味に関しては衝撃を覚えるほどに美味だった。

 食前酒から始まり、目を見張るような煌びやかな料理が次々と運ばれ、その都度密かに感嘆の吐息をもらした。芸術作品のごとく見た目は美しく味も超一流。

『美味しいね』と言って鮮やかにカトラリーを扱う慧弥は、やはり育ちの良い御曹司なのだと改めて実感した。テーブル席も周りの目が気にならない個室を取っていた。

 コースの合間に彼が頼んだワインひとつにしてもフランス語で書かれているので、想乃にとってはちんぷんかんぷんだった。二十歳(はたち)になって数ヶ月の想乃でも飲みやすいワイン(もの)を選んでくれたようで、薄く大きなワイングラスに口を付け「美味しい」と呟いていた。
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