Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 なにを見ても感動し、初めて口にする料理の数々に想乃は舌鼓を打った。想乃の反応を見て、彼が嬉しそうに笑った。「喜んでくれて良かった」と。

 想乃は口元に手を当てて、頬をあからめた。

『これじゃあだれのお誕生日なのかわからないですよね』

 主役そっちのけでついはしゃいでしまった自分をたしなめ、『ろくにお祝いもできていないし』と言って俯いた。

『まだプレゼントとか気にしてる?』
『……はい。まぁ』

 どちらかと言うと、いつも自分が貰ってばかりで彼には何ひとつあげられていない。彼にとって、一年に一度のおめでたい日でさえ存分に与えられてばかりいる。気にするなと言うほうが無理だった。

『慧弥さんって。今欲しいものとかありますか?』

 自分には珍しく、彼に関する質問をしているなと訊いてから気がついた。姉である黎奈(れな)の干渉もあってか、彼についてのあれこれをやはり知りたいと思っていた。

『……そうだねぇ。あるにはある』
『な、なんですか?』

 ワイングラスに口をつけ、思案顔で慧弥が呟いた。想乃は慌てて話に食いついた。慧弥が望むものとはいったいなんだろう、どれほど高価なものだろうと想像して身構える。お金を貯めて買えるものならぜひプレゼントしたい。
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