Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「すごい。デザートはお任せでとしか言ってないんだけど」

 コースを注文した当人にとってもサプライズだったようで、慧弥は目を丸くして驚いていた。

「お誕生日おめでとうございます、並樹さま」

 料理を運ぶギャルソンとは別に、シェフらしき男性が慧弥に近づき頭を下げた。

「ありがとう。以前より腕を上げられましたよね。今日の料理はどれもこれも素晴らしい出来ばえでした。おかげで彼女にも喜んでもらえて」
「それはそれは何よりでございます。大切な日に当店へお越しいただき、光栄なお言葉までちょうだいしまして。誠にありがとうございます」

「引き続きごゆるりとお楽しみください」と一礼して、シェフとギャルソンが立ち去った。

 こんな素敵なお店の料理人に誕生日を覚えてもらえるなんて。よほど行き慣れているということだ。想乃は彼らのやり取りを見て、改めて敬服の念を強めた。

 繊細に彩られたデザートをふたりで堪能し、彼が構えるスマホで一緒に写真も撮った。かつて想乃が呼んでいたスイーツプリンスの名にふさわしく、ケーキの味に酔いしれる慧弥を見て、きゅんと胸が締め付けられた。顔を綻ばせて笑う無邪気な表情にトキメキを覚えずにはいられなかった。

 帰りは慧弥が呼んだタクシーで自宅まで送ってもらった。彼と並んで後部座席に乗り込んだとき、鞄の中でスマホが鳴ってつい中を確認してしまった。
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