Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 それまでほろ酔い気分でいた想乃がハッと目を見張った。

「メール、だれから?」

 彼に尋ねられて「いえ、別に」と下手な仕草で取り繕う。

「こ、コンビニのシフトで。月曜に出れないかって、店長から……。でも断っておきます。お母さんの治療もあるので」
「ふぅん、そっか」

 慧弥は目を細めて想乃の様子をジッと観察していた。

 自宅の玄関を開けたころには午後十時を回っていた。想乃は入浴もせずに自室へこもり、スマホに届いたメールを読んでそのまま眠りについた。


 きちんとドライヤーで髪を乾かしてから、リビングに置きっぱなしにしていたスマホを持ち上げた。

 昨夜届いたメールを開いてひっそりと息をつく。二通届いていた。

【還暦祝いパーティーには出席されますか?】

 例の、未来人を(かた)るメールだ。受信があまりにも久しぶりなので、これの存在をうっかり忘れてしまう。

【そこで今現在、私が親しくしている方との出会いがあります。並樹から救ってくれた人物です】

 こんなの、慧弥さんに見せられるはずがない。

 想乃は未来人が書いた文章を見つめ、眉を八の字に寄せた。むっと不機嫌な顔で唇をわずかにひん曲げていた。

 だいいち【救ってくれた】ってなに、と思ってしまう。今現在の想乃を救ってくれたのは紛れもなく慧弥なのだ。なのに、その彼から救われる、なんて。彼を侮辱されている気がして単純に腹が立った。
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