Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 それは今まさに自分に起こっていることと同様のことであり、想乃は(くだん)の元カノをトレースしているだけに過ぎないのではないか、そう思った。

 だとしたら一年後は確実に縁を切られる。慧弥に好かれ、本物の恋人にならない限り、自分はその元カノと同じ扱いを受けるだろう。

「私としてはきっと強がりでそう言ったんじゃないかなぁと思うのよね。じゃなきゃ子供ができるようなこと、しないでしょ?」
「……そうですね」

 本心ではない機械的な同意がこぼれた。

 ——「好きになれる子がいない。ただそれだけ」

 今になって慧弥の淡白な物言いが真実味を帯びていた。

 彼はきっと理性的で滅多に感情が揺り動かされることがないのだろう。普段、想乃に見せるあの甘い顔は計算し尽くされた演技によるもので、本心からの言葉ではない。だからこそ、のめり込み、勘違いをしてはいけないのだ。

 慧弥は器が広く優しい人だけど、同時に残酷な人なのかもしれない。彼が過去にした打算的な交際に進歩があるとしたら、今回は契約書を用いたことだ。

 ——【並樹は自社のためにあなたを利用しようとしています。詳細は語れませんが警戒だけは怠らないでください】

 未来人からのあの警告もあながち間違いではないのかもしれない。
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