Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「あ、今言った元カノの話は慧弥には内緒ね? 婚約者に黒歴史を吹き込むなって怒るだろうから」
「……はい、わかりました」

 作り笑いを浮かべたあと「黎奈さん」と呼びかけていた。

「私、黎奈さんにひとつだけ聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」

 そう言ってようやく聞きたいことを尋ねていた。



 手の中でスマホが鳴っていた。

 想乃は自宅のリビングでハッと息を飲み込み、物思いから覚めた。

 画面を確認する。慧弥からの電話だと察して、慌てて回線を繋いだ。「もしもし」とうわずった声を上げると『想乃』と名前を呼ばれた。きゅんと胸が締め付けられる。

『今日はなにしてたの?』

 あ、と呟きがもれて小さく笑みが浮かんだ。

「黎奈さんと一緒に……お出かけしてました」
『え、姉さんと?』

 滅多に聞かない慧弥のうろたえた声に「はい」と返事をしながらクスッと笑ってしまう。

「黎奈さんのお店へ連れて行ってもらって、服を見立ててもらいました。そのあと初めてエステサロンにも行って、癒されてきました」
『……へぇ。俺とじゃない初体験をしたわけだ?』
「ふふっ、はい。黎奈さんってとっても面倒見のいいお姉さんですよね。たくさんお喋りもして、楽しかったです」

 電話の向こうで彼がハァ、とため息をつくのが伝わった。
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