Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
今日黎奈から聞いた話では、慧弥は、亡き母・並樹《なみき》 雅《みやび》をとても大切に想っていたらしい。「ママっ子で、いつも母のそばを離れなかったの」と、黎奈はどこか寂しそうに笑った。
想乃が黎奈に聞きたかったのは、まさに慧弥の実母についてだった。慧弥は何歳のときに母を亡くしたのか。彼が好きだと言った雅のピアノは、どんな曲を奏でていたのか。
想乃は、パーティーで弾く選曲に思い悩んでいたので、黎奈が当時の曲名を覚えていないかどうかを尋ねた。黎奈の反応は悪くなく「母の楽譜を探してみる」と言ってくれた。
『黙っていてごめんね』と慧弥が言った。
『好きじゃない人の話って、正直気が滅入るからさ』と、言い訳じみた笑いをこぼした。
「いえ。大丈夫です。パーティーまでに慧弥さんのご家族のことを、ちゃんと知っておいた方がいいって黎奈さんに言われたので。これから勉強します」
『そっか……そうかもね』
さらりと受け流したあと、受話器の向こうで『あ』と慧弥が思い出したように声を上げた。
『想乃にひとつだけ確認しておきたいと思っていたんだけど』
「なんですか?」
『……俺のこと、本気で好きになったりしてないよね?』
「え……」
声を発した瞬間、不自然に表情が固まった。
想乃が黎奈に聞きたかったのは、まさに慧弥の実母についてだった。慧弥は何歳のときに母を亡くしたのか。彼が好きだと言った雅のピアノは、どんな曲を奏でていたのか。
想乃は、パーティーで弾く選曲に思い悩んでいたので、黎奈が当時の曲名を覚えていないかどうかを尋ねた。黎奈の反応は悪くなく「母の楽譜を探してみる」と言ってくれた。
『黙っていてごめんね』と慧弥が言った。
『好きじゃない人の話って、正直気が滅入るからさ』と、言い訳じみた笑いをこぼした。
「いえ。大丈夫です。パーティーまでに慧弥さんのご家族のことを、ちゃんと知っておいた方がいいって黎奈さんに言われたので。これから勉強します」
『そっか……そうかもね』
さらりと受け流したあと、受話器の向こうで『あ』と慧弥が思い出したように声を上げた。
『想乃にひとつだけ確認しておきたいと思っていたんだけど』
「なんですか?」
『……俺のこと、本気で好きになったりしてないよね?』
「え……」
声を発した瞬間、不自然に表情が固まった。