Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
第五章 祝宴のピアノが奏でる答え
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心地よい振動に身を任せながら、想乃は流れゆく車窓に目をとめた。そわそわとどこか落ち着かない気持ちをひた隠し、きゅっと下唇を噛んでしまう。ついにこの日が来たのだな、と思うと漠然とした不安の渦に飲み込まれる気がした。
「緊張してる?」
すぐ隣りの運転席でハンドルを握る慧弥が、困ったようにくすっと微笑んだ。「少し」と返事をして、膝の上で握りしめたパーティーバッグに目を落とす。本当は、そんなものではなかった。
十二月二週目の日曜日。慧弥の父を大々的に祝うためのパーティーが、都内でも有名な三つ星ホテルの大ホールを貸し切って開催される。
今、想乃が着ている上質なコートの下はレース袖の付いたあの紺色のワンピースだ。コートはいつの間にか慧弥が購入して自宅に送り届けてくれた。
その慧弥も今日はばっちりとパーティー仕様で決めており、ロイヤルブルーのスーツを着ている。いつも下ろしている前髪を上げて、お洒落に整えている。
まずは第一の関門、と想乃は心の中で唱えた。
この日のために結んだ契約でもある。彼を取り巻く人間関係の中に、婚約者の浅倉想乃という存在を強く印象づけなければいけない。パーティー会場での挨拶さえ上手くいけば、あとは成り行きに任せればいい。