Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 本当ならパーティーまでピアノの練習をしたことや、母の療法を続けていること、コンビニ業務を退職したこと、慧弥の姉である黎奈にマナーを習ったことを書きたかった。

 けれども、日記にコメントをした人物とパーティーで会うかもしれない、そう考えるとこれ以上プライベートを晒すのが怖くなったのだ。匿名でつけている日記だから、書いているのが想乃で、Kが慧弥のことだとはっきりバレたわけではない。

 だからといって、あのコメントを無視することはできない。もし、ある程度の確信を持って書かれたものなら、相手はこちらの素性や内情を知っているかもしれない。

 想乃は多大なる不安を抱き、ひとまずは日記サイトの設定を非公開にした。

 今、隣でハンドルを握る慧弥にも、もちろん相談できるはずがない。そのまま放置という形を取っている。

 ハァ、と思わずため息がもれた。今日のパーティーがどうなってしまうのかと考えると不安で仕方ない。何かしら自分にとって不都合なことが起きたらどうしよう。

 ——【並樹への恋心を断ち切って、もっと早くにあの人の気持ちに応えていたらと後悔しています】
 ——【還暦祝いパーティーで出会います。会えばわかります】
 ——【彼の存在が、いずれあなたを並樹から救ってくれます】

 うっかり、未来人から届いたメールの内容まで思い出し、きゅっと眉を寄せた。
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