Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「あと。親族やゲストに紹介するときは、できるだけ俺がそばにいるから」
「慧弥さんが私から離れることはないってことですか?」

 「うーん」と眉を寄せ、彼が首を捻った。

「ない、と言いたいとこだけど。親族代表のスピーチを任されているんだよね。そのときだけかな、離れるの」
「……そう、なんですか」
「うん。想乃にとっては完全にアウェイな場だし、ひとりだと心細いと思うから。俺がいないときは姉さんのそばにいるといいよ。仲良いんでしょ?」

 黎奈の明るい笑みを思い出し、自然と口元が綻んだ。「はい」と頷きながら続ける。

「実は昨日も会ってました。初めてネイルサロンに連れて行ってもらって」

 うきうきと声を弾ませ、右手の爪を見つめる。ピアノ演奏に差し支えのない範囲で、想乃もネイルを施していた。

 ピンクのフレンチネイルに、さりげなくパールをあしらったデザインが可愛らしい。パーティードレスが落ち着いた色味なので、アクセントとして爪は華やかにしたほうがいいと言われたのだ。

「ずるいよなぁ〜、俺なんか今日の準備のために泣く泣く想乃とのデートを諦めたっていうのにさ」

 盛大にため息をつく慧弥を見て、想乃は作り笑いで応じた。慧弥のこの思わせぶりな発言にももう慣れた。
< 229 / 480 >

この作品をシェア

pagetop