Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「黎奈さんにはパーティーでのマナーとか挨拶の仕方とか。もろもろを教えていただきましたから」
「にしても、俺より会う頻度多かったんでしょ?」
「それは、まぁ。そうですけど……」
「想乃は俺の彼女なのにさ」

 慧弥は口を尖らせ、不服そうに呟いた。彼女と言っても、“仮の”ですけどね、と心の中で訂正する。

 彼は私のことをいったいどう思っているんだろう。この関係を成立させるための顧客? それとも恋愛対象には当てはまらない妹のような存在? ……わからない。

 慧弥が何を考えているのか、まるで読めない。

 この偽りの関係を始めたときに確認したはずだけど、彼は一年後、どうするつもりなのだろう。自分との関係を清算して、まさかまた新たに別の女性へ依頼するとでも……?

 考えても仕方のない疑念が生じ、想乃はため息をつくことでやり過ごした。

 会場に到着したのは、お喋りが途切れて十数分後のことだった。コバルトブルーのSUVから降りて、会場まで慧弥にエスコートしてもらう。

 ホテルのクロークでコートを預けてから、慧弥と並んで受付を済ませる。

 式次第の載った小さなパンフレットを渡された。腕に掛けた小ぶりのパーティーバッグを開けて中に仕舞うと、慧弥の腕に手を添えてホールの入り口へ進んだ。
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