Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
ホテル内は暖房がしっかり効いていて、薄着でも充分に温かい。
「慧弥!」
ホールに入った途端、彼の名前が耳に飛び込んできた。呼んだのは片手を挙げて笑みを浮かべるひとりの紳士。眼鏡をかけ、口髭とあご髭をお洒落に整えている。どこか洗練されたダンディなおじさまだ。
「叔父さん」といくらか微笑みながら、慧弥が彼に近づく。
想乃は、慧弥の腕に添えていた手をパッと放し、彼らの家系図を頭の中に思い浮かべた。
“叔父”ということは、慧弥の父の弟、並樹蔵だろう。ナミキホールディングスでの肩書きは副社長だ。
「やっぱり慧弥は早いな。黎奈はまだ着いていないらしいぞ?」
「おおかた子供たちに手を焼いているんでしょう、そのうち来ますよ」
彼らの歓談の場を邪魔しないよう、想乃は沈黙と淑やかな笑みを心がけた。
ホテルのボーイがウェルカムドリンクを配りながら声をかけると、慧弥はノンアルコールのスパークリングワインを二人分もらった。「飲まないのか?」と叔父に尋ねられつつ、ひとつを想乃に手渡した。
「ええ。自家用車で来ましたし、帰りの運転もありますから」
「そんなの代行を呼べばいいだろう?」
「嫌いなんですよ、自分の車を他者に動かされるの」
叔父の蔵は困ったように眉を下げ、嘆息をもらした。「ところで」と続け、蔵の目が隣りの想乃に向けられた。
「慧弥!」
ホールに入った途端、彼の名前が耳に飛び込んできた。呼んだのは片手を挙げて笑みを浮かべるひとりの紳士。眼鏡をかけ、口髭とあご髭をお洒落に整えている。どこか洗練されたダンディなおじさまだ。
「叔父さん」といくらか微笑みながら、慧弥が彼に近づく。
想乃は、慧弥の腕に添えていた手をパッと放し、彼らの家系図を頭の中に思い浮かべた。
“叔父”ということは、慧弥の父の弟、並樹蔵だろう。ナミキホールディングスでの肩書きは副社長だ。
「やっぱり慧弥は早いな。黎奈はまだ着いていないらしいぞ?」
「おおかた子供たちに手を焼いているんでしょう、そのうち来ますよ」
彼らの歓談の場を邪魔しないよう、想乃は沈黙と淑やかな笑みを心がけた。
ホテルのボーイがウェルカムドリンクを配りながら声をかけると、慧弥はノンアルコールのスパークリングワインを二人分もらった。「飲まないのか?」と叔父に尋ねられつつ、ひとつを想乃に手渡した。
「ええ。自家用車で来ましたし、帰りの運転もありますから」
「そんなの代行を呼べばいいだろう?」
「嫌いなんですよ、自分の車を他者に動かされるの」
叔父の蔵は困ったように眉を下げ、嘆息をもらした。「ところで」と続け、蔵の目が隣りの想乃に向けられた。