Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「そういえば姉さんが言ってたな。どのタイミングで記念映像を流すべきかって」
「そうなんですか?」
「ほら、会食と言っても立ちっぱなしだから高齢の方は疲れるでしょ。だからと言ってスライドショーは外したくないし、座っての会にすると交流を深めるチャンスもない。ああだこうだ言いながら、晴彦さんと話し合ってたよ」
「……へぇ」

 想乃は未だに一杯目のドリンクを持ったまま、演壇付近に立つ黎奈に目をやった。やはりすごい人だなぁと思う。

「それじゃあ、そろそろ父にも紹介したいし。ゲストへの挨拶回りもあるから行こうか?」
「あ、はい」

 半分に減った想乃のグラスを取り、慧弥が通りかかったボーイに返却する。想乃のほっそりとした手を握り、父、(あきら)のもとへ歩いて行った。

 慧は取引先の社長たちと輪を作り、楽しそうに談笑していた。視界の先に息子の慧弥を見つけ、「失礼」と告げて会話を中断した。相手に失礼ではないかと、こちらが心配になるほどだが、それだけ気心の知れた間柄なのだろう。

「慧弥」と父に呼ばれ、彼が笑みを浮かべる。想乃も彼と一緒に慧のもとへ向かった。
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