Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 “結婚”という言葉を飲み込み、塚口が目を丸くした。再三想乃を見つめて「すごいね、きみ」と声をかけてくる。

「どうやってこの薄情な冷血漢を落としたの?」
「……え」
「おいおい、ずいぶんな言われようだな」
「ンな事言って。心当たりぐらいはあるだろ?」
「まぁ。……それなりには?」

 茶目っ気のある笑みを浮かべ、慧弥が首を傾げた。

 薄情な冷血漢という言葉も気になったけれど、そもそもな話、落としてなどいない。

 ただふりをしているだけですから。想乃は心の中で訂正し、慎ましく微笑んだ。

 慧弥と塚口が他愛ない会話をするなか、想乃は手にしたグラスに口をつけ、そっとスクリーンに目を向けた。

 中央の演壇で上映される写真の数々を見つめ、あ、と目を見張る。数秒おきに切り替わる写真の一枚を見て、心臓がドキンと脈打った。

 四人で写した家族写真だった。父である慧の若かりしころだろう、黎奈も慧弥もまだ幼く無邪気な笑みを浮かべている。

 慧の隣りには、黒髪ストレートの綺麗な女性が佇んでいた。どこか憂いに満ちた翳りのある表情で微笑んでいる。

 それが誰であるのか、わざわざ説明されなくてもわかる。慧弥の亡くなった実母、雅だ。

 写真が次のものへ切り替わったとき、「慧弥!」と後方から快活な女性の声が耳に飛び込んだ。
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