Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
『家で待っていてくれたら迎えに行くから』と電話で言われたが、駅前の本屋で見たい雑誌があったため、駅で待ち合わせることにした。

 バスロータリーに止まったSUVに乗り込み、想乃は慌ててシートベルトを締めた。

「さっき、ナンパされてなかった?」
「え?」
「男二人に声かけられてたよね?」

 走り出してすぐ、慧弥が尋ねた。赤信号をムッとした様子で見つめ、想乃とは目を合わせない。

 ………?

「はい。バスの乗り口について聞かれたので、裏のロータリーですよって教えてました」
「……え。それだけ?」
「そうですけど」

 そこでようやく目が合った。「ふーん」と呟くと、慧弥の表情がいくらか和らいだ。信号が青に変わり、また走り出す。

「久しぶりにラーメン食べたくない?」

 さっきとは打って変わり、慧弥の声はいつもの穏やかさを取り戻していた。

「いいですね、私もラーメン好きです」

 同意すると、慧弥は上機嫌で微笑んだ。

 予約なしでラーメン屋へ向かったので、待つことを覚悟していたが、平日だったせいかすぐに席に案内された。

 それぞれが好きなラーメンを注文し「美味しいね」と笑い合いながら夕食を楽しんだ。

 慧弥と手を繋いで店を出ると、想乃は今日のことを打ち明けた。
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