Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 生活感がなく、まるで高級ホテルのスイートルームみたいだ。

 天井が高く、大きな窓からのびやかな開放感が広がっていた。ダウンライトが空間を柔らかく照らし、ペンダントライトが煌びやかに輝いている。

 想乃は部屋を見渡し、家具の少なさに気づいた。

 壁は白で統一され、床にはグレーのフロアタイルが敷かれていた。

 高層階ならではの眺望を活かし、奥にはロータイプのコーナーソファが壁際に配置されている。その手前には大理石のローテーブル。床にはダークグレーのラグが敷いてあった。

 シックモダンなインテリアは大人っぽく、慧弥にぴったりだと思った。

「想乃?」

 ホテルのような空間に圧倒されていると、不意に名前を呼ばれた。

「こっち、奥のソファに座れば?」
「あ、はい」

 慧弥の横を通り、奥へと歩く。座るよりも先に、窓の向こうに広がる夜景に目を奪われた。

「……素敵」

 ぽつりと呟き、ふっと息をもらした。窓の手前で立ち止まり、宝石箱のような景色につい見惚れてしまう。背後で慧弥が何かを取り出す気配がした。

「これが資料だよ」と言い、慧弥はローテーブルに一冊のクリアファイルを置いた。

 想乃は丈の長いスカートの裾を軽く持ち上げ、ソファに腰を下ろした。
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