Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 想乃は両手でぎゅっとファイルを握った。慧弥の気持ちが嬉しかった。きっと自分ひとりで調べていたら、ここまで詳細なビジョンは浮かばなかっただろう。

「となると、次の目標はヤマノグレードに申し込むことだね」
「はい。自分でも一度調べてみます。合格するための対策とか練習方法が、ネットにも書いてあると思うので」
「わかった。もし、プロの講師からレッスンを受ける必要があれば、そのときはまた教えてね、力になるから」
「はいっ、ありがとうございます!」

 想乃が満足そうに微笑み、頭を下げる。

「ところで」と続け、不意に慧弥が話題を変えた。

「潤の話は考えてくれた?」
「……え?」
「写真の依頼」

 写真……そう思った途端、先日のパーティーで会った慧弥のいとこ・並樹潤の言葉が蘇った。

 ——「彼女、撮らせてくれないかな?」
 ——「できたら前向きに考えてほしい」

「……っあ!」

 どうしよう。すっかり忘れてた。

 想乃の反応をじっと観察し、慧弥が顔を綻ばせた。

「忘れてたって顔してるね?」
「……はい」

 返す言葉もなく、素直に頷く。マグカップを手に取り、コーヒーを飲み干した。

「潤の被写体、どうしても気がすすまないなら、俺から断っておくけど」
「……いえ。一応、受ける方向で考えています」
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