Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「明日、慧弥さんに頼まれて親子丼を作ることになったんだけど。付け合わせの副菜っていうか……何にしたらいいと思う?」
「慧弥さんに? 親子丼? まさかあの“なんちゃって親子丼”?」
「そう」
「……うわ」

 郷は小さく呟き、露骨に顔をしかめた。

「やめなよ、貧乏くさい」
「えぇー? もう約束しちゃったし」
「だったらせめて、鶏皮はやめてもも肉買ったら? あと三つ葉は必須だよ」
「もも肉かぁ……高いからそんなに使ったことないし、美味しく料理できる自信ない」
「国内産でいいやつ買えば、美味しくできるって。料理の動画レシピでいい感じのやつ送るから」
「うん。ありがとう」
「ていうか、これ結婚の適正テストってやつ?」
「……え?」

 スマホを素早く操作し、郷が動画レシピを送ってくれた。想乃は画面から目をあげて、首を傾げた。

「あまりにも料理できなかったら、婚約破棄とか……ありえるのかな?」
「うーん……?」

 テストもなにも、最初から期間限定の偽装婚約だ。破談になるのは決まっている。

「姉ちゃん、慧弥さん逃したらだめだよ絶対! あんないい人いないんだし、失敗するようならまた挽回のチャンスもらってよ?」
「わ、わかった」
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