Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 スマホを枕元に置いて充電器を繋ぐ。壁のスイッチに手を伸ばし、電気を消そうとしたところでメールの着信音が鳴った。

 音に反応して指先がピクリと固まる。久しぶりに聞く通知音だ。

 まさかと予感し、想乃は再びスマホを持ち上げた。思った通り、【未来人からのお知らせ】と題して、Xからメールが届いていた。

 そういえば前回のぶんは返事をしていない。【還暦祝いパーティーはどうでしたか? 私が言っていた人が誰なのかわかりましたか?】という内容だ。

 また同じ内容だったら、【わかりませんでした】と書いて送ろう。そう決心してメールを開いた。

【ふと気になったのですが、あなたがいるそちらの世界では、母はどのような状態ですか?】

 途端に想乃の丸い目が大きく見開かれた。メールの文章を何度も読み返して、少しの間息を止めていた。はっ、と細切れに吐息がもれる。

 “あなたがいるそちらの世界では”
 “母はどのような状態”

 気になったのは、この二点だ。

 想乃はわずかに顔を青ざめさせ、「どういう意味なの?」と呟いた。すぐさま返事を打つ。

【どういう意味ですか? そちらの世界って、過去という意味ですよね、違うんですか?】
【母がどのような状態というのも、曖昧で混乱しています】
【母は今、病院で治療を受けています。回復の見込みを信じて、私も頑張っています】
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