Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 そんなとき、声をかけてくれたのが先ほどのおばさんで、想乃に激安レシピの数々を伝授してくれた。

「いわゆる主婦の知恵ってやつですね。あのおばちゃんには節約の方法とかも教わって」
「そっか。想乃を助けてくれた人なんだね」

 慧弥は卵の棚から10個入りのパックを手に取り、穏やかに微笑んだ。

 レジに並び、順番が回ってくる。

「バーコードで」

 慧弥がいつものようにスマホを差し出すと、店員は申し訳なさそうに眉を寄せた。

「すみません、うち、対応してないんですよ」
「……じゃあタッチ決済で」
「ごめんなさい、うちは現金のみなんです」

 店員が少し考え込み、想乃に視線を向ける。想乃は慌てて鞄を開けた。

「現金か……」と呟き、慧弥はカードウォレットを取り出した。中から一枚のお札を差し出すと、店員がほっとしたように微笑んだ。

「恐れ入ります」と言い、店員は会計を済ませる。

「ごめんね、想乃。普段からあまり現金は持ち歩かなくて」
「いえ、一万円あれば充分です」

 私の財布なんて二千円しか入っていない。小銭だけで買い物することもある。

 スマホで計算しながら、予算内に収まるように買うのも日常茶飯事だ。

 買ったものをレジ袋に詰め、店を出た。
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