Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
*
「慧弥さんは、未来の人と連絡を取っているのでしょうか?」——心の中で問いかけるだけで、実際には口に出せない。
今朝、Xのメールを見たときから、ずっと気になっている。
想乃は隣で運転する慧弥をそっと窺い、小さく息をついた。
直接尋ねて確かめたいけれど、Xの言うことがまったくのでたらめだとしたら、正気を疑われるかもしれない。
Xとのメールのやり取りを見せることもできるけれど、そうすれば、自分が慧弥に恋をしていると気づかれてしまう。
それは非常に困る……!
相談するなら、もっと早い段階で動くべきだった。
「なにを悶々と悩んでいるの?」
慧弥に横目を向けられて、想乃は赤い顔で首を振った。
慧弥の自宅へ着き、購入した食材をいったん冷蔵庫へ入れる。シュシュで髪をまとめ、想乃は家から持参したエプロンを着けた。
慧弥に調理器具の場所を教わったあと、まな板を出し、三つ葉、玉ねぎ、うすあげと順に切っていく。鶏皮はひと口サイズに切り、使わない分は小分けにして冷凍庫に入れさせてもらった。
想乃はフライパンを出し、鶏皮を焼き始めた。
親子丼専用の鍋もあったが、使い慣れたフライパンを借りることにした。
手際よく淡々と手を動かす想乃を見て、慧弥が嬉しそうにそばで微笑む。