Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 焼き目をつけた鶏皮に玉ねぎ、うすあげを入れて出汁で煮込む。みりんとめんつゆを加えて沸騰させ、味見をする。

 ボールで溶いた卵を二回にわけて回し入れた。

 ふっくら炊き上がったご飯に親子丼の具をのせ、仕上げに三つ葉を添える。

 付け合わせのたくあんを小皿に盛り付け、完成だ。

「美味しそう」と慧弥が顔を綻ばせた。

「……“なんちゃって”なので。あまり自信はないんですけど」

 キッチンの手前に備え付けたカウンターテーブルに並んで座り、慧弥が「いただきます」と手を合わせた。

 想乃は、先に箸を取った慧弥をじっと見守る。箸と丼を持つ所作が相変わらず綺麗だ。

「ん」と声を上げ、慧弥が目を丸くした。咀嚼して飲み込み、「美味しいよ、すごく」と率直な感想をもらす。

「ほ、本当ですか?」

 想乃は食い気味に尋ねた。

「うん……なんだろう、出汁が効いてるね。卵や三つ葉との相性も抜群だよ。かなり美味(うま)い」

 そう言うと、手を休めることなく次々と箸を進めた。

 ホッとして、ようやく想乃も箸を取った。顕著に感じたのは、ご飯の甘さだった。

 きっと良いお米を使っているんだろう、いつもより何倍も美味しく感じる。激安丼なのに。そう思うと、なんとなく笑ってしまった。
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