Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 慧弥が完食してくれた。それだけで、作ってよかったと思えた。


「他のレシピも作ってよ?」
「……え」

 二人で並んで後片付けをする。想乃が食器を洗い、慧弥がそれを拭いて片付ける。

「他にもあるでしょ? 想乃のおすすめレシピ」

 想乃は少し考え込み、「うーん?」と首を傾げながら小さく笑った。

「鶏皮のお味噌汁……胸肉のチキンカツ。ぽん酢チキンとか……合挽きミンチのハヤシライス……そのあたりは好きです。郷も喜んでくれるし」
「へぇ。それじゃあ順番に作ってもらおうかな。休みはたっぷりあるし」

 想乃は「わかりました」と頷き、「気に入ってもらえて良かったです」とはにかんだ。

 リビングへ移動すると、慧弥が尋ねた。

「なにか映画でも観る? それともどこかへ出かける?」

 想乃は大きな窓の向こうを見つめ、少しだけ考える。

 外は寒いし、特別行きたい場所もない。ただ慧弥と、二人だけの時間を楽しみたい。

「なにか、映画が観たいです。慧弥さんの好きなジャンルで選んでください」

 ウキウキしながら彼に近づくと、「ホラーだけどいいの?」と慧弥がからかうように言った。

「ホラーは無理です!」

 想乃は八の字に眉を寄せ、ぷるぷると首を振った。想乃の反応を見て、慧弥が楽しそうに笑った。
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