Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜


 自室のデスクに座り、想乃はブログのコメントを眺めていた。

《素敵なクリスマス、お正月を迎えられましたね。ブログを読む限り、Kさんと両思いではないかと思うのですが、違うのでしょうか?》

《そうなんですね…好きにならないでと言われているのですね》

《でも、無責任なことを言うようですが、私が思うにはKさんは間違いなくピアノSさんが好きだと思いますよ》

《もしかしたら、それが恋だとKさんは気づいていないのかも?》

《ご成人おめでとうございます。素敵な成人式になりましたね》

 何度かやり取りをした、顔も知らない相手に思いを馳せる。想乃はわずかに口角を上げた。優しい人がいるものだ。


 新しい年を迎えた一月半ば。

 年末年始を慧弥と過ごし、二十歳の成人式を終えた。そのことを綴った日記を、なんとなく読み返していた。

 嘘の恋人役をしているKに失恋したと気づきながらも、まだ片思いを続けている——そんな恋煩いを赤裸々に綴っていた。

 想乃はつい先日のことを思い出しながら、新たなページに文章を打ち込んだ。

 一昨日の土曜日、慧弥のいとこ・並樹潤から、被写体の依頼を受けたのだ。

 呼び出されたのは、ピアノが常設されたアンティーク風のカフェだった。
< 311 / 480 >

この作品をシェア

pagetop