Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 誰かが調べれば、すぐに想乃が書いたものだと気づくだろう。

 いつからか、黎奈は自分のスマホを見つめて「うーん?」と首を傾げていた。美海の情報をたよりに、自身でも検索したようだ。ログインしなくても読めるのだと、このとき初めて知った。

「確かに……美海が疑うのもわかるけど」

 そう言って黎奈は目を上げて想乃を見る。疑惑に満ちた瞳の色だ。

 想乃は眉を寄せ、小刻みに首を振った。

 黎奈にだけは、そうとは知られたくなかった。日頃から黎奈が良くしてくれるのは、あくまでも想乃が慧弥()の婚約者という立場だからだ。

 もし嘘がばれたら、彼女は自分を見限るだろう。今年の秋までには、嘘を本物にしたいと思っているのに。

 違います。心の中でそう呟いたとき、突然想乃の鞄の中から着信音が鳴り響いた。

 黎奈が電話だと察して、「出たら?」と促す。想乃は小さく頷いた。

 画面を見ると、慧弥からの着信だった。

 黎奈の隣で美海はすっと目を細め、得意げな笑みを消した。その表情は、なんとなく不満そうに見えた。

「あの、もしもし?」
『想乃。今なにしてる? ピアノ弾いてた?』
「あ、いえ。今日は黎奈さんと約束していてAvenir(アヴニール)に来ているので」
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