Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 想乃が小さく頷くと、女性警官は安堵したように息をついた。

「加害者の男はすでに警察署へ移送済みです」と、説明してくれる。「怖い思いをされた直後で申し訳ないのですが、簡単な聞き取りだけさせてもらえませんか?」

 想乃は思案し、またこくりと頷いた。慧弥のそばで話すのをためらっていると、女性が「パトカーの中でお話ししましょうか?」と声をかける。想乃はその申し出を受け、女性とともにパトカーに乗った。

「加害者とはどのような関係ですか?」
「事件が起きる前、どんな状況でしたか?」
「覚えている範囲でかまわないので、何があったか教えてください」

 警察官の問いに、想乃は思い出しながら答えた。聞き取りは十五分ほどで終わったが、警察は想乃の供述をもとに血液検査が必要だと判断した。

 そのまま警察署へ同行することになった。

「不安なことがあれば、すぐに警察へ連絡してくださいね」

 警察署の出口でそう言われ、想乃は女性に小さく会釈した。

 慧弥に手を引かれて駐車場へ向かう。助手席の扉に手をかけたとき、後ろからふわりと抱きしめられた。

「想乃が無事で本当に良かった……!」

 背中に慧弥の熱を感じて、じわりと瞼が熱くなる。想乃は何も言えずに、ただこくりと頷いた。
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