Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 慧弥は俯いたまま、低い声で「黙って」と呟いた。

「い、嫌ですっ。黙りません! どうせ終わってしまうなら、全部言わせてくださいっ!」
「いいから、黙れって」
「私は、慧弥さんが好きです! 本物の恋人になれたらどんなにいいかって、ずっと思ってました……っ」

 言い終わるか終わらないかのうちに、慧弥の手が想乃の後頭部に伸び、不意に唇を塞がれた。

 柔らかくて温かい感触が触れた瞬間、心臓が震えて止まりそうになる。

 ………え?

 慧弥にキスをされている——その現実を、ようやく頭で理解した。

 想乃は硬直したまま、ぱちりと丸い瞳を瞬いた。やがて彼の唇が離れ、ふっと息をつく。

「何で先に言っちゃうかな」

 慧弥が不満そうに眉根を寄せる。

「俺から告おうと思ってたのに」

 そう言いながら、想乃の頬を伝う涙を親指でそっと拭ってくれる。

「え……?」

 思わず声がこぼれ落ちた。

 何で、と言いたいのに、言葉がうまくまとまらない。

「まさか気づいてなかったの? とっくに伝わってると思ってたけど」
「……え?」

 想乃はまだ硬直したまま、困惑したように首を傾げた。

 その反応を見て、慧弥がガクッと肩を落とした。深いため息をついている。

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