Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「わざわざ“愛してる”って言ったのに」

 そう言って、想乃を抱き寄せる。

「こんなことなら、バレンタインなんかにこだわらずに、さっさと言っておけば良かった」

 彼にぎゅっと抱きしめられると、きゅんと痺れるように胸が締め付けられた。

「俺も想乃が好きだよ。だからクリスマスに二十四本の薔薇を渡したんだ」

「薔薇」と呟き、その意味を考えようとするが、結局のところ頭が働かない。

「一応、本数にちなんだ花言葉を意識したんだけど。わからないならそれでもいい……」

 これは……現実?

 いつの間にか眠っていて、都合のいい夢を見ているんじゃ……?

 慧弥は想乃の肩に手を置き、わずかに身を引いた。彼の頬がほんのりと赤い。熱を帯びた茶色い瞳が、想乃を映していた。

「想乃を愛してる。勝手ばかり言うけど……あの契約は破棄して、正式に婚約しよう」
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