Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 体調を気遣い、控えめに問いかけると、慧弥がゆるく微笑んだ。想乃の手を取り、不意に抱き寄せた。

「会いたかった」

 想乃の髪を撫で、柔らかな感触を確かめるように抱きしめる。

 想乃の瞳がわずかに滲んだ。胸の奥がじんわりと熱くなる。

「私も……会いたかったです」

 慧弥の背に手を当てて、想乃もぎゅっと抱きしめ返した。彼の温もりが、胸に染み込んでいくようだった。

 慧弥がデリバリーサービスを呼んで、ソファに並んで昼食を取っていた。

「過労ですか?」
「……うん?」
「慧弥さんの熱」

 想乃が、お茶を飲みながら静かに尋ねると、慧弥は「うーん?」と困ったように微笑んだ。

「過労と時差ボケと……軽いめまいってところかな。向こうではほとんど寝てないし、食べてない……かなり詰め詰めのハードスケジュールで動いていたから……体が限界を超えたみたい」
「……みたいって」

 冷静に分析する慧弥を見て、想乃は少し困惑する。

 まるで自分の体調のことを、他人事のように言うのだから。

「夕方の便で帰国して、オフィスで報告したところまでは覚えてるんだけど……よく家まで帰れたなって」
「もう、連絡してくださいよ」
「早く帰国して、想乃を驚かせようと思ったんだよ」
「別の意味で驚きましたよ」
「ははっ、それは失敗したなぁ〜」

 慧弥は茶目っ気たっぷりに首を傾げ、想乃を見つめた。
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