Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 慧弥の内にこもる憎しみを感じ、ようやく悟った。一週間以上前に、家政婦の田代から聞いた“いざこざ”を思い出す。だからこそ慧弥は——。

「あいつは狂ってる。だから、絶対に弱みのひとつぐらいあると思ったんだ。予想どおりだった。俺は……穂花の……。不貞の証拠を掴んで、公にした」

 その後のことは、慧弥の口から聞かなくてもわかった。

 田代の話を思い出す。慧弥は父に、穂花を追い出すよう迫ったが、受け入れてもらえなかった。

「父にあいつとの離婚を望んだけれど……。でも、父は別れなかった。家の体裁を気にして……家庭内のごたごたがスキャンダルとして取り上げられたら、株価にも影響するからって」

 慧弥は、大きく息を吐き出した。まるで深い海の底に沈み込むような苦しげな表情で、ハァ、と息を吐き、静かに鼻をすすった。

「それから、しばらく荒れた」
「……荒れた?」

 慧弥のどこか疲れたような、憔悴した瞳と目が合い、想乃は悲しげに眉を下げる。気づけば涙がこぼれていた。想乃はそっと拭い、慧弥の話に耳を傾ける。
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