Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 想乃の喉がかすかに震えた。

「無理やりしたくない」

 慧弥の瞳がまっすぐに想乃をとらえる。その奥にある感情が伝わってきた。

 慧弥さんは……。自分が受けた痛みを、私には味わわせたくないんだ……。

 想乃はそっと目を伏せ、頷いた。彼の優しさが、胸の奥でじんと響いた。

 慧弥の熱が、再び肌に戻ってくる。

 唇を重ねるたびに、意識がふわりと溶けていく。

 心の奥で疼くものが、少しずつ大きくなっていった。

 優しい指先が肌をなぞる。繊細な愛撫に、想乃の唇から甘い吐息がこぼれる。

 静寂の中に、熱い息遣いが絡み合い、満ちていく。甘やかな細い嬌声を何度となく上げてしまう。

 慧弥の手が想乃をそっと抱き寄せた。視線に確認されて、想乃は小さく顎を引く。

 瞬間、鋭い痛みが走る。

 けれど、それでも——

 拒む気持ちは、どこにもなかった。

 寄せては返す波のように、彼の動きは優しく、そして抗いがたい。

 まるで遠い空の星がひとつに溶け合うように……。想乃は、彼の中へと深く引き込まれていった。

「想乃……愛してるよ」

 囁く声が優しく、胸の奥にしみわたる。

 ゆっくりと瞳を開いた。

 痛みの先にあるのは、たったひとつの温もり。

 なんでこんなに、幸せなの……?

 視界が揺らめき、涙が頬を伝った。

 今、この瞬間、彼のものになれたのだと思った。



 小さく肩で息をつく。

 すると慧弥が、そっと想乃の髪を撫でた。
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