Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「痛かったよね……?」

 問いかける声に、想乃はかすかに笑みを浮かべる。

「少しだけ……でも、それよりも……幸せの方が大きくて」

 潤んだ瞳から涙がこぼれる。それを自覚しながら、想乃は曖昧に口角を上げた。

 嬉しくて泣いてしまうほど——

 彼を、愛している。

 慧弥への想いは絶大で、もはや彼が想乃のすべてだった。

 好きという感情に、終わりなんてない。

 そう確かに、実感する。

 そっと涙を拭われて、当たり前のように、もう一度キスをした。

 彼の腕の中は心地よくて、離れたくないと強く思う。

 指を絡めると、慧弥は静かに息を吐き、抱きしめる腕を少し強めた。


 *

 パキッ——小さな音を立てて、ブリスターパックを割る。

 朝食のパンをひと口食べたあと、想乃は痛み止めを口に含み、水で流し込んだ。

 下腹部にじんわりと鈍い痛みが残っている。

 生理痛のような感覚。それほど強くはないが、違和感は拭えなかった。

 そんな想乃の様子を、慧弥はじっと見つめていた。不安げな表情で、「ごめんね……」と申し訳なさそうに呟く。

「俺としたからだよね……」

 気遣わせてしまっているのが、逆に申し訳ない。

「そんな、私が望んだことですから!」
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