Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「激しい運動なんかは無理ですけど、歩くぐらいなら平気ですよ? どこか出かけましょ?」

 うきうきと慧弥を見上げると、彼は「うーん」と呟き、思案顔になる。

 そして、不意にキッチンのカウンターテーブルへ向かい、スマホを手に取った。
 そのままどこかへ電話をかけ始める。

「お世話になります、並樹です」

 仕事関係の人だろうか。
 そう思いながら、想乃はふとローテーブルに置きっぱなしの自分のスマホに目をやった。

 ちょうどそのとき、短い通知音が鳴る。ポイントアプリのメッセージだった。

 それを見て、想乃は唐突にXのことを思い出した。

 週に一度のペースでメールを送ってきていた、あの未来人のことを——。

 画面をスライドし、Xからのメールボックスを開く。

 最後に届いたメールを確認した。

 ——【並樹は何者かから、あなたの周囲で起こる不幸の情報を得て、それらを改変しているのだと思います】

 このメールを最後に、もうひと月半以上、Xからの連絡がない……?

 正体のつかめない、おぼろげな不安が胸中に広がる。

 慧弥との関係が深まるにつれ、Xのことを考える余地がなくなっていたのは確かだ。

 それに、仮に今Xから連絡が来たとしても……慧弥への気持ちが揺らぐことはない。
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