Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 でも、Xはいったい何がしたかったのだろう?

 考えれば考えるほど、腑に落ちないものが残った。

 Xは、ただ慧弥さんを悪く言い、私の不安を一方的に煽っていただけのような気がする……。

 画面を見つめたまま、想乃は眉をひそめた。——そのとき。

「何それ?」

 すぐそばに気配を感じ、ハッと息をのむ。

 慧弥が、すぐ隣にいた。

 驚いてスマホの画面を閉じ、ぎこちない表情で彼を見上げる。

「想乃。誰かとメールしてたの?」

 低く穏やかな声だった。けれど、その静けさがかえって胸をざわつかせる。

「“並樹”って書いてあったけど……もしかして、俺のこと?」

 彼の目を見た瞬間、想乃は悟った。

 慧弥が、浮気か何かを疑っている——。

「ち、違うんです!」

 慌てて首を振る。

「メールをしていたのは、確かだけど……でも、それは私から送ったんじゃなくて! いつも一方的に届くメールで……っ」

 必死に弁解する想乃を見つめながら、慧弥は静かに息をついた。

「……それで、誰から?」

 落ち着いた声の奥に、確かに探るような響きがあった。

「わ、わかりません」

 想乃は縮こまるように答えた。

「……わからない?」

 慧弥の声が、わずかに低くなる。

 想乃は眉を寄せ、言葉に詰まった。
< 403 / 480 >

この作品をシェア

pagetop