Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
【並樹が、今のあなたのように別の未来人と連絡を取っている可能性があるということです】

 Xがミライの存在を察知した。
 自分と同様に過去へ介入する存在を知り、さぞ憤っただろう。

 おそらく——X(こいつ)が何かやらかしたに違いない。

 慧弥は思案し、先日交わしたミライとの電話を思い返す。

 ——『実は未来(こちら)でもトラブルがありまして……会社存続の危機です』
 ——『先日、何者かが社長のパソコンに不正アクセスし、企業戦略に関する虚偽の証拠を捏造してリークしました』

 何者かにパスワードを盗まれたか、それとも単純に内部の者の犯行か。
 そう考えていたが……事態はどうやら、もう少し複雑らしい。

 俺が社長なら、想乃に関するアルファベットや記号をパスワードにする。
 未来の俺も、おそらくは同じだろう。

 なぜなら——三十年後のミライが生きる世界線には、すでに浅倉想乃は存在しないのだから。

 慧弥は無言で想乃のスマホを閉じた。

「慧弥さん……?」

 想乃がか細い声でこちらを窺う。

 何も言わず、慧弥はさらに思考を深めた。

 ミライはこれまでに、執拗にこう言ってきた。

 ——『浅倉想乃を大切にしろ』
 ——『彼女を守れ』

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