Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「俺と結婚してくれる?」

 まっすぐに見つめる瞳。

 その温かな眼差しに、胸がいっぱいになる。

 熱いものがこみ上げ、視界が滲んだ。もちろん、答えは決まっている。

「……はいっ、喜んで!」

 涙を浮かべたまま頷いた瞬間。

 館内の照明が一瞬、ふっと落ちる。

 わずかな静寂の後、再びライトが灯された。

 水槽には、大きく「おめでとう!」の文字が浮かんでいる。

 まるで、水槽の生き物たちも、想乃と慧弥の結婚を祝福しているかのようだった。


 プロポーズの余韻に浸る間もなく、二人は結婚式の準備を進めた。

 式場を選び、日取りを決める作業は、思いのほかスムーズに進んでいく。

 いくつかの候補を巡った末、十月上旬の日曜日に決定した。

 秋の穏やかな空気の中で誓いを交わす日が、今からとても待ち遠しい。


 *

 二人にとって、平穏で幸せな時が流れる、そんな折——。

 突然、慧弥のスマホが鳴った。

 それはちょうど週末の夜、慧弥の部屋で映画を観ていたときのことだった。

 慧弥は、スマホが鳴るやいなや、すぐさまソファから立ち上がった。

 想乃はテレビを消し、連れ添うように慧弥の後を追う。

 スマホの液晶を見た慧弥の表情が、わずかに緩む。

 どこか期待を込めたような目で、想乃にアイコンタクトを送る。
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