Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「お待たせしました。お疲れ様です、ミライさん」

 あらかじめ、次にミライから着信があったとき、「二人で電話に出よう」と慧弥から言われていた。

「ハンズフリーで会話をするから、想乃は俺がいいと言うまで黙っていてほしい」——そう頼まれていた。

 その言葉を思い出し、想乃は少し緊張しながらも、慧弥の後ろで静かに見守った。

『お疲れ様です』と少女の声がスマホから流れた。可愛らしい声だ。以前、慧弥から聞かされていた録音データのものと一致している。

「あまりにも連絡が遅いので、トラブルの解決に時間がかかっているのかと心配していましたよ」

 慧弥の声が、どこか芝居がかったように聞こえた。

『いえ、トラブル自体は八日ほどで片付きました。犯人に心当たりがあったので、逮捕まで実に早かったんですよ』

 ミライの声は少女のものだが、話の内容がそれにそぐわず、想乃は違和感を覚えた。

「そうなんですか? それなら、もう少し早くに連絡してくださいよ。こちらでは、ずいぶんと時が流れましたよ? もう四月上旬なので」
『……四月? そちらでは、そんなに時間が経ったんですか?』
「ええ。一か月と十日ほど……ですね」
< 429 / 480 >

この作品をシェア

pagetop