Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
『……なるほど。ワームホール通信を使う以上、そちらとこちらの時間の流れが常に比例するとは限らない、というわけですね』

 ミライが、どこか楽しそうに笑った。

『慧弥さん、わざとらしいですね? 研究チームから報告を受けているあなたなら、これぐらいのことはお分かりになるでしょう?』

 ミライの指摘を受けて、慧弥の口元がわずかに緩んだ。

「……確かに、時間跳躍実験の際、空間の歪みが影響して時の進み方にズレが生じるケースがあると聞いています。でも、まさかここまで顕著だとは」
『ええ。そちらでは四十日が経過したのに、こっちはまだ十日。つまり、そちらの時間の進み方が、私のいる世界線より約四倍速い計算になりますね』
「このズレは制御できないんですか?」
『理論上は可能ですが、今の技術ではまだ不安定です。特に、過去と未来で並行して異なる世界線が存在する場合、互いの時間の進み方が完全にシンクロすることは、ほぼあり得ません』

 慧弥が少し考え、「なるほど」と呟いた。

「時間跳躍にはどうしても予測できないズレがつきもの。理論上は時間を合わせることができても、実際には世界線ごとの時間の進行速度に差が生じることがある——だからこそ、こうしたズレが起きるのも仕方ない、そういうことですね?」
『はい。その通りです』

 双方の会話を聞きながら、想乃は眉をしかめた。何を言っているのか、まるで異世界の話みたいだ。

 置いてけぼりを食らいながらも、二人のやり取りを黙って見守るしかなかった。
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