Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
『ただし、塚口が裏部署に侵入し、時間跳躍データ通信の研究技術を盗んでいたのは事実です。彼は独自に開発を進めていました。そのあたりで、Xと通じていた可能性はあります』

 短い言葉の中に、重くのしかかる情報が詰まっている。

 想乃は、コンサートホールで会った塚口を思い出した。

 未来世界では、彼は、すでに亡くなっている。

 けれども、Xと何らかのつながりがあった——?

 目の前がぐらりと揺らぐような感覚に襲われながら、想乃は言葉を失った。

『Xについては、あまり深く考えないでください。こちらの世界ではすでに逮捕されていますので、あなた方の世界へ二度と干渉することはないでしょう』
「……そうですか、わかりました」

 郷の配慮に、慧弥が軽く笑う。

『今後、慧弥さんは塚口の動向に気を配ってください。くれぐれも研究データを悪用されることがないように』
「……もちろん、そのつもりです」

 慧弥は顔を綻ばせ、うんうんと頷いた。まるで、とてもいい情報が聞けたと喜んでいるかのようだった。

『もうそろそろ……いいでしょうか? 通信も不安定になってきましたので』
「ええ……聞きたいことはおおよそ質問できましたし、結構ですよ?」
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