Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 慧弥はそう言いながら、想乃に目配せする。通信を切っても問題ないか、目で問いかけているのだ。

「……はい。私も大丈夫です。色々と話してくださり、ありがとうございました」

 想乃の声に、ミライが一瞬沈黙する。
 すぐにでも『では』と言って電話が切れるかと思いきや、ミライは『すみません』と少しかすれた声で言った。

『やっぱり、最後にひとつだけ』
「……何でしょう?」

 慧弥が尋ねる。
 想乃は無言で首を傾げた。

『慧弥さんに忠告です。今後……“背後には十分お気をつけください”』

 ……え?

 想乃は表情をこわばらせ、隣の慧弥を見つめる。

 彼はきょとんとした後、ふっと口角を上げた。

「わかりました……気をつけます」
『……では』

 そこで、プツリと通信が途切れた。

 慧弥が口元に手を当て、ふふっと忍び笑いを漏らした。その様子を見て、想乃は呆れて息をつく。

 ミライの最後の忠告——『背後に気をつけろ』は、明らかに身の危険を案じた言葉だった。それなのに、彼はまるで気にも留めていない。むしろ、この状況を楽しんですらいる。

 まったく、どうしてそんなに余裕なの……?

 想乃は思わず眉をひそめた。

 それにしても——。
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