Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 想乃は頷くと、医師は優しく続けた。

「では、少し注意が必要な時期ですから、無理はしないでくださいね。特に今は体調が不安定になりやすい時期でもあるので、安静にして過ごすことが大切です。あとは、食事や水分摂取にも気をつけて、健康的な生活を心がけてください」

 その言葉に、自然と安心感が広がるのを感じた。

「何か不安なことや、心配なことがあればすぐにご連絡ください。お二人とも、赤ちゃんのためにできるだけリラックスして過ごしてくださいね」

 医師はもう一度、優しく微笑み、診察を終えた。

 慧弥の車に乗って、帰路を辿った。医師からもらったエコー写真を見つめながら、ふと涙が込み上げてくる。

 理由は分からないけれど、ただ、胸の奥が温かく、幸せな気持ちでいっぱいだった。

「俺と想乃の子供かぁ」

 慧弥がぼんやりとつぶやいた。その声には、感慨深さが滲んでいた。ハンドルを握る彼を見つめ、想乃の口元が思わず緩んだ。

「今が八週ということは……十一月の中旬か下旬が予定日になるだろうね」

 事前に調べていたらしく、慧弥は頭の中で計算をしながら、嬉しそうに声を弾ませた。その顔に、父親になる喜びが溢れている。

 想乃は慧弥を見つめて、心の中で何度も「ありがとう」と繰り返していた。
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