Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 彼がこの瞬間をどれほど大切にしているのか、何となく伝わってきて、胸が締めつけられるような思いがした。


 *

 並樹家の食卓は、想乃が今まで見たどんなダイニングとも違っていた。

 広々としたダイニングホールの中央に鎮座するのは、長方形の大きなテーブル。重厚な木材で作られたそれは、十数人が座っても余裕があるほどのサイズだった。

 天井にはシャンデリアが輝き、広い窓からは手入れの行き届いた庭が見える。まるで格式のある迎賓館のような空間だった。

 テーブルの上には、家政婦の田代によって次々と料理が並べられていく。温かいスープにローストビーフ、色とりどりの付け合わせの野菜……。すべてが美しく盛り付けられ、まるで高級レストランへ来ているかのように錯覚する。

 食卓を囲むのは、慧弥の父・慧、姉の黎奈とその夫・晴彦、そして黎奈夫婦の子供たち——憂依(うい)(かい)だ。

 ふたりのそばにはベビーシッターの山内がついており、子供たちが食事に集中できるよう静かに声をかけていた。

 想乃は妊娠初期で、まだ食の好みが安定していないため、目の前のサラダとフルーツをゆっくりとフォークで口に運んでいた。ドレッシングの酸味がほどよく、さっぱりとした味わいが今の自分にはちょうど良かった。
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