Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 郷の声が静かに響く。過去の慧弥との最期の通信内容を、淡々と説明し始めた。

 慧弥の元には、幸せを手にした浅倉想乃が共にいた。彼らの話によると、自分たちだけでなく、Xという別の未来人も干渉し、不安と混乱をもたらしていたと言う。

 Xの正体は、最近逮捕された犯人に他ならないと、郷は判断した。

【なるほど。そこまでして……】

 液晶パネルに慧弥の思考が再び浮かび上がる。

【会社ごと乗っ取ろうとした、その執念は認める】

「感心している場合ではありません」

 郷が一息ついてから、そう言うと、隣で駈も小さく口を挟んだ。

「そうですよ、お父さん。郷くんや他の役員たちが早急に対処にあたってくれたので、難を逃れたんです」

【悪い悪い】

 その軽口から、郷は慧弥の遊び心に溢れる、かつての笑みを想像した。

 病床にいるはずの慧弥が、その言葉だけであたかも元気でいるように感じられる。そんな瞬間が、ひとときだけでも温かい。

【それで?】
【そのXの正体を、彼らに明かしたのか?】

「……いえ。あちらの姉さんに余計な不安を与えないよう、伏せておきました。……でも、慧弥さんには、もしかするとバレたかもしれません」

【少なからず……】
【心当たりがあるのだから仕方ない】
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